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ほねっこアニメ部屋

俺たちは腐っているんじゃない、発酵しているんだ

06-29

2013

「今日の高齢者、未来の高齢者に捧ぐ」 スペインアニメ「しわ」見てきた

見てきました。「しわ」

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プロモーションを全然してないので、知名度は低いかもしれませんが、とても面白かったです!
誰もが避けられない、だけど直視しようとしない「老い」を正面から捉えた作品に、心打たれました。。
とてもヘビーな内容で、見終わった後に心に重石をのせられたような余韻が残ります

作品は、息子夫婦に連れられて老人施設に預けられることになった「エミリオ」を軸にストーリーが進んでいきます
エミリオは施設の老人たちと交流を重ねながら、老いゆく自分を自覚しつつも、「記憶と自我を失い同じことを繰り返す人たちとは違う」という思いを抱きながら日々を過ごしていきます
そんなエミリオをよそに、彼の認知症は徐々に進行していきます


老人施設に預けられてボケボケになった老人たちの日常を、手描きアニメーションでコミカルに描いていますが、その描写がストレートで容赦ありません。

例えば、四六時中電話を探し続けている女性が出てきます。
「私はどこも悪くないの。息子たちに電話してここから出してもらうの。ミゲル、電話はどこにあるの?」
「それならここを真っ直ぐ行って右だ」

しかし、彼女は廊下の途中で立ち止まりキョロキョロ。自分が何をしていたのか忘れてしまったようだ。
そして、毎日のように彼女に嘘の場所を教えているミゲル(施設に預けられている老人の中では珍しく、自我を保っている)はこう言います。
「これは人助けだ。これで彼女は毎日忙しく過ごすことができているんだ」

老人施設に預けられた老人たちがたくさん出てきますが、時とともに誰も彼もが記憶を失い、
「飯を食いクソをして寝るだけ」(ミゲル)
の存在になっています。

俺も俺の両親も、そして70年80年汗水流して頑張って生きてきた全ての人間が
友人も家族も、そして自分ですら分からなくなってしまうんだと痛感させられます。ぞっとしますね。。

「老い」という人にとっての永遠のテーマを扱っている作品ですが、アニメーションにすることでその重さが少し和らいでいるような印象です
現地で制作・公開された素材に日本語字幕を付けただけの、洋画と同じようなつくり
キャラクターや背景などは原作に沿って描かれており、海外のカートゥーン調といった感じかな
作品のテーマは「老い」が舞台が「老人施設」なので、派手なアクションや動きはなく静かに淡々と進んでいきます

「高齢者問題はこうなっています。僕はこうした方がいいと思います!」
といった作者の利己的な自己主張は全くなく、ただあるがままの現実を視聴者に見せ、考えさせるよう様な内容になっていたのも大変良かったです

とにかく素晴らしいの一言です。

公開館は少ないし、公開時期もおそらく短いでしょうが
「今日の高齢者、未来の高齢者」に見てもらいたい素晴らしい作品でした!
機会があればぜひ見てみてください!私ほねっこが保証します!

ってか、劇場の年齢層は40~50代がマジョリティで、僕が一番若かったかもしれない・・・w
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